サセッティ・リヴィオ・ペルティマリ ─ 揺れる期待と現実のあいだで
グラスに注ぐ前、抜栓の瞬間からこのワインは強烈な印象を与えてきた。コルクを抜いた途端に立ち上るのは、まるで甘いいちごジャムのような香り。濃密でチャーミングなアロマに、思わず期待が高まる。2016年という優良ヴィンテージ、名門サセッティのペルティマリ。心が踊らないはずがない。
ところが、グラスに注いで鼻を近づけた瞬間、その期待は戸惑いに変わる。赤い果実の香りの奥から立ち上がるのは、思いのほか強いアルコールの揮発香。まるでネイルポリッシュを嗅いでいるかのような刺激的な印象が鼻腔を突く。ラベルを確認すると、アルコール度数は14.5%。ブルネッロとしても高めの数値だ。
口に含むと、その印象はさらに明確になる。果実味は確かに感じられるものの、アルコールの熱が全体を支配し、繊細なニュアンスを覆い隠してしまう。タンニンはしっかりと存在しているが、骨格としてではなく、アルコールの勢いを支えるように張りつめている印象。酸との調和も取りづらく、ややアンバランスな仕上がりに思える。
ブルネッロらしい重厚感はあるものの、構成の緻密さや調和といった要素が欠けており、飲み心地の良さには乏しい。抜栓直後の香りがあれほど魅力的だっただけに、その落差が惜しまれる。もしかすると、デキャンタージュを含めた長時間の空気接触で印象が変わる可能性はあるが、少なくとも抜栓直後の印象は「バランスを欠いたワイン」と言わざるを得ない。
サセッティ・リヴィオ・ペルティマリという名門のブルネッロであるがゆえに、期待が大きかった分、評価は厳しくなる。2016年の恵まれたヴィンテージであっても、アルコールの高さと構成の繊細さが噛み合わないことがある。その現実を、あらためてこの一本が教えてくれたように思う。
評価(5点満点):
Sassetti Livio Pertimali 2016 Brunello di Montalcino 3点