古木ガルナッチャの滋味 ─ Gaznata Bodega Don Juan de Águila

スペインの内陸、シエラ・デ・グレドス山脈の麓に位置するワイナリー、ボデガ・ドン・フアン・デ・アギラ。そこで造られる「Gaznata(ガスナータ)」は、ガルナッチャ(グルナッシュ)という古典品種が持つ素朴な美しさと、職人的な醸造哲学が見事に調和した一本だ。

グラスに注ぐと、まず立ち上るのは甘いイチゴを思わせるチャーミングな香り。瑞々しい赤い果実のアロマの中に、わずかにスパイスやドライハーブのニュアンスも感じられる。派手さはないが、自然体で心地よく、飲む前から癒やされるような香りだ。

口に含むと、印象は軽やかでありながら芯が通っている。ミディアムボディで、熟した果実味が穏やかに広がり、酸とのバランスも良好。アルコール度数は14.5%と高めだが、不思議と鼻をつくような揮発感はなく、むしろ温かみと厚みを与えている。タンニンは丸みを帯び、古木由来の奥行きと密度を感じさせる。

その背景にあるのは、ブドウ栽培と醸造の丁寧な仕事だ。樹齢50〜100年という古木から、わずか4,000kg/haという超低収量で得られるガルナッチャを使用。収穫後は選果と除梗を経て、24時間のマセラシオンを行い、野生酵母によるアルコール発酵をセメントタンクで実施。発酵中には軽いピジャージュ(櫂入れ)が行われ、最終的に軽くフィルターを通すだけという、極めて自然なアプローチだ。

その結果生まれるワインは、ナチュラルでありながら、どこかクラシックな骨格を備えている。ステーキやスパゲッティ・ミートソースなど、肉の旨味を引き立てる料理との相性が抜群で、食中に飲むとそのバランスの良さが一層際立つ。

そして何より驚くのは、この完成度のワインが2,000円台で手に入るということだ。値段を知らずにグラスを傾けたなら、きっともっと高価なワインだと思うに違いない。古木のガルナッチャが持つ滋味深さを、手軽に味わえる一本。

Gaznata は、スペインのガルナッチャの底力を静かに物語る、誠実で心温まるワインである。

評価(5点満点):
Gaznata 2022 Bodega Don Juan de Águila 3.2

投稿者 tosh