カリフォルニア、サンタ・リタ・ヒルズの冷涼な風土を背景に、ワインメーカーのグレッグ・ブリューワーが手がける「Diatom」。彼が共同設立したBrewer-Cliftonとは別に、より研ぎ澄まされた哲学を表現するために生まれたブランドだ。

ロス・オリボスにあるテイスティングルームで説明してくれたケイトリン女史によると、このワインの出発点は意外にも日本。もともと日本の料亭のために、和食に寄り添うワインを造ることから始まったという。そのためか、口に含むと吟醸酒を思わせるような澄み切ったキレがある。

醸造においては徹底的に純度を追求。オーク樽は一切用いず、ステンレスタンクのみで仕上げられる。葡萄をプレスしてから瓶詰めまでを可能な限り迅速に行い、シャルドネ本来の香りと味わいをそのまま閉じ込める。グラスに注げば、マイヤーレモンやライムの皮の爽やかなアロマが立ちのぼり、口中にはほんのりと塩のニュアンスが広がる。アルコール度数は14.5%と高めでありながら、不思議なほど透明感と軽やかさを感じさせるのも特徴だ。

ペアリングの幅は実に広い。刺身や寿司といった王道の和食はもちろん、イカの塩辛、ウニくらげ、漬物といった発酵や塩味を持つ日本の食材にもよく合う。さらに、シーフードを使ったパスタなど、地中海料理とも見事に調和する。

興味深いことに、かつてのボトルには松尾芭蕉の句があしらわれていた。日本文化へのリスペクトが、Diatomの根底に流れていることを象徴するエピソードといえるだろう。

Diatomは、海のミネラルを映し出すような透明感を持ちながら、食卓に寄り添う柔らかさを兼ね備えている。まさに「純粋なるシャルドネ」と呼ぶにふさわしい一本だ。

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投稿者 tosh