ギリシャ・クレタ島原産のVidiano(ヴィディアノ)は、まだあまり知られていない土着品種だが、今回試飲した一本は、そのポテンシャルと個性をじわじわと感じさせる印象深いだった。
グラスに注いだ色合いは澄んだミディアムイエロー。冷やした状態では香りは控えめで、第一印象としてはChardonnayを思わせるようなシンプルさが漂う。しかし、時間とともにグラスの中で表情が変化していき、真の魅力がゆっくりと姿を現してくる。
最初に広がるのは、オレンジやレモンのような柑橘系の爽やかさ、そこにカモミールの穏やかで柔らかいフローラルな香りが重なる。さらに深くなるにつれて、タイムやバジルを思わせるようなハーブのアクセント、そしてクレタ島の土壌を感じさせるミネラル感が加わり、香りに奥行きと構成力が出てくる。
さらに時間をかけると、熟したピーチやアプリコットのような甘く丸みのある果実味が顔を出し、ライチのような華やかなニュアンスも感じられるようになった。このゆるやかな展開は、飲み手に余裕を与え、ワインの変化を楽しむ贅沢な時間をもたらしてくれる。
味わいはミディアムボディで、酸は穏やかで、バランスがよくとれている。口当たりにはわずかにオイリーなテクスチャがあり、余韻も静かに長く続く。シンプルに見えて、実は非常に表現力のあるワイン。
料理との相性も申し分なく、今回はレモン風味の釜揚げシラスのパスタと貝柱のジェノベーゼソース添えと合わせたが、いずれも素材の持ち味とワインの風味が調和した。また、りんごとパルメザンチーズというシンプルな組み合わせでも、このワインはしっかりと存在感を発揮した。


地味ながらも静かに感動を与えてくれるような一本であり、ギリシャワインの奥深さと、土着品種の面白さをあらためて感じさせてくれる味わい。単独でも、食事とともにも楽しめる白ワインだ。
評価(5点満点)
DAFINOS Vidiano 2023 3.8点